湯けむりにふすぼりもせぬ月の貌

12月17-18日、草津温泉へ行ってきた。半年振りの一人旅である。

昼過ぎ、新宿駅で駅弁を買った後、埼京線赤羽駅へ。赤羽から特急「草津」に乗って約2時間半。草津温泉の最寄駅、長野原草津口駅に着く。途中まで北陸新幹線を使う手もあったが、僕はそれを選ばなかった。

僕は特急が好きだ。特急の車窓はバカでかく、幅が1m以上もある。通り過ぎる景色を見てくれと言わんばかりだ。縦横数十cmしかない新幹線との窓とは大きく違っている。流れる景色は、当然美しいものばかりではなく、単なる住宅街だったりすることも多い。そんな景色とも言えない景色を、酒でも飲んでぼんやり眺めるのが好きなのである。

また、特急は車内放送も良い。発車時や駅に着いた時などに流れるチャイムは、新幹線だとTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」や山口百恵の「いい日旅立ち」が使われているが(聞き飽きた)、特急は何とも言えない曲がオルゴールのように流れ、哀愁を誘う。あのオルゴールを旅先で聞くと、一人遠くへ来たなあ‥としみじみとした淋しさ混じりの気分になるのである。

草津温泉は中心地に大規模な湯畑があり、ランドマークの一つになっている。草津温泉といえば、日本一を争う温泉街の一つだろう。江戸時代には林羅山が三名泉の一つとして紹介したほどである。その勢いはさすが、湯畑のまわりは多くの観光客で賑わっていた。地面のあちこちから湯けむりが上がり、硫黄の匂いが立ち込めていた。

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草津温泉には、地元住民も利用するという、古くから親しまれてきた共同浴場が数か所存在していて、草津へ来たからには共同浴場にも足を運んでみようと決めていた。が、「大滝乃湯」という看板が目に止まり、とりあえずここに行ってみることにした。ここは率直に言ってスーパー銭湯のようなものだった。

大滝乃湯でひとっ風呂浴び、草津を散策していると、早くも日が暮れてきた。

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17時半、宿に到着。この宿は50年以上前に建てられた、かなり年季の入ったものらしいが、随所がリフォームされており、掃除も行き届いていて非常に居心地が良かった。自分の部屋で食事ができるのも何か新鮮だった。

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翌朝は9時に宿を出発し、「熱の湯」で「湯もみ」のショーを観た。「湯もみ」は、高温のお湯を水を使わずに冷ますために編み出された手法。湯もみを見ていると、草津が単なる娯楽的温泉街ではなく、湯治の街だったのだと気付かされる。

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熱の湯で湯もみショーを観た後、隣の共同浴場「白旗の湯」を訪れた。洗い場などは無い。無骨に湯船があるだけだ。僕の他にも数人が入ってきて、お湯のあまりの熱さに誰しもが「あっつっ!!」と声を上げていた。

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最後に、Aにお勧めされた「西の河原露天風呂」へ。この露天風呂は、湯畑から西方に広がる「西の河原公園」の奥にある。公園を流れる川は温泉であり、あちこちから湯気が上がっている。温泉地ならではの不思議な光景が広がっていた。

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昼過ぎ、特急「草津」で東京へ戻った。源頼朝田中角栄竹久夢二‥数多くの著名人が草津温泉を訪れた。彼らに交じって自分も草津を訪れたのだと思うと、何か不思議な気分である。