モン・サン・ミッシェル

フランス3日目である。5泊の予定なので、この日が折り返し地点になる。

この日、一旦パリを離れ、モン・サン・ミッシェルを訪れることにしていた。モンサンミッシェルへはTGVやバスを乗り継いで行くことになる。TGVは10時8分にモンパルナス駅から発車する。TGVの乗り方がいまいちよくわからなかった僕は、発車の2時間前にはモンパルナス駅に着いておこうと思い、6時に起床、7時過ぎにホテルをチェックアウトした。

 

TGVが発着するモンパルナス駅はフランス国鉄の駅である。メトロでモンパルナス・ビヤンヴニュ駅に降りると、その地上にある。インターネットで予約した際に得た予約番号を元に、発券機で乗車券を発券する。相変わらず画面がフランス語表記で、何が書かれているかさっぱりわからない。発券機の操作方法を解説したWEBページを、事前に印刷して持って行ったのが功を奏した。

発車までかなり時間があったので、構内にある「PAUL」というパン屋でパンを買って食べた。このパン屋はチェーン店のようで、パリ市内のあちこちの駅の中で見かけることができた。パリではバゲットにハムやチーズを挟んだサンドイッチをよく食べたが、この時は菓子パンのようなものを買ってしまって、甘すぎて朝から胃がもたれてしまった。ついでにトイレを利用しようとすると、0.5ユーロ必要と書かれているではないか。用を足すにも金がかかるなんて、いくらかカルチャーショックを受けたが、我慢できずに入口のおばさんにお金を渡して中に入った。

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発車15分ほど前にTGVがやってきた。TGVには1等車と2等車があって、それぞれの雰囲気を知りたかった僕は、往路に1等車、復路に2等車を予約していた。1等車は広めの座席が用意され、僕は1列シートに座ることができた。席は向かい合わせになっていて、中年の女性が座っていた。約2時間、非常に快適な旅だった。

12時20分ごろ、レンヌ駅に到着。モンサンミッシェルへ向かうバスが、レンヌ駅のバスターミナルから12時35分に出発する。乗換えに15分しか余裕が無い。にもかかわらず、ターミナルがどこにあるのか、案内が非常に不親切で、単に「バス乗り場はこちら」という表示を頼りに歩いてしまうと路線バスの停留所に着いてしまう。発車数分前になんとかターミナルへ辿り着き、バスに乗り込むことができた。

バスは1時間ほどで目的地に着く。ぼーっと窓の風景を眺めていると、斜め前に座っている中年男性から日本語で声を掛けられた。日本の方ですか?自分もモンサンミッシェルに泊まろうとしていて、今、ネットで1部屋57ユーロの部屋が見つかったので、シェアしませんか?と。あまりにも唐突で、どうにも胡散臭さが拭えず、いえ、既に部屋を取っていますから、と断った。しかし、話していくうちにあまり悪い人ではなさそうだった。仕事ついでに観光に来ているとのことで、バスを降りる前に、日本が恋しくなるでしょうからと、マルコメのインスタント味噌汁(あさり)をくれた。

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13時50分、モンサンミッシェルの対岸でバスを降りた。モンサンミッシェルへは、さらにシャトルバスに乗って向かうことができるが、風景を楽しみたかった僕は、橋の上を40分かけて歩くことにした。

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ついにモンサンミッシェルに上陸。観光客でごった返している。日本人観光客もあちこちにいた。

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まずはホテルにチェックインする。おとぎ話の世界にあるようなホテルだ。どう考えても僕には似合っていない。

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部屋で一息ついた後、「プラールおばさん(La Mere Poulard)」へ。この店が出すオムレツはモンサンミッシェルの名物料理として有名だ。オムレツ、白ワイン、マカロンのセットで39ユーロ。高すぎる。そしてオムレツは拍子抜けするほど味がしない。誰かが冗談で「ケチャップを持って行ったほうがいい」と言っていたのを思い出した。このオムレツは、モンサンミッシェルに来たら体験すべき儀式だと捉えるのがよいのかもしれない。

店を出て、修道院の中を散策した。数百年前から幾度に渡り増改築が繰り返された建物で、ひんやりとした雰囲気が漂っている。

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18時を過ぎると、一気に人通りが少なくなった。皆、日帰りで来ていたのだろう。19時になると、修道院がひたすら鐘を鳴らしていたのが印象的だった。

19時半から夕飯を食べに出た。日本人観光客が多いからか、モンサンミッシェルのレストランはどの店も日本語のメニューが置かれているようだ。僕は店先に貼られたメニューを見ながら、良さげな店に入ってみた。「Le Mouton Blanc」なるこの店は、いくつかのムニュを用意していて、僕はMenu Traditionalという34ユーロのムニュと、8.5ユーロの赤ワインを注文した。このムニュは、自家製フォアグラ、子羊背肉のロースト、クレープのカルバドス酒フランベ、という構成だ。本格的なコース料理はこれが初めてだったが、なんとも言えない満足感だった。子羊は脂身が多くて胃がきつい上、なかなかナイフで切ることができず、ひーこら言って食べた。フランベしたクレープは、見た目こそお洒落だが、味は特段美味いものではない。フォアグラは美味かった。しかしそれは、僕がフォアグラにアンキモ的な安心感を覚えたからかもしれない‥

1人、テーブルに座って黙々と食べていると、目の前のテーブルに座る6人ほどの日本人家族に目が止まった。祖父・祖母・子ども達は食事が済んで早々にホテルへ戻ったようだが、父と母は席に残り、割と大きな声で口喧嘩をしていた。旅行中の父の態度が発端で言い合いになっているようだった。日本国内ならともかく、ここはフランスであって、言い合いをしている姿を周りの全ての外国人が「これだから日本人は」という目で見ている。もう少し考えたほうがよいのではないか。よっぽど忠告してやろうかと思ったが、我々のせいでますます店の中が混乱してしまうのを想像して踏みとどまった。同じ日本人としてこれほど恥ずかしいことはない。日本人は日本国外にいる限り、日本人としての自覚と誇りを持って行動しなければならないと、ますます痛感させられた。

 

21時ごろ、ようやく日が暮れたのを見て、夜景を撮って回った。

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23時には寝てしまったが、夜中に下痢になってしまい、0時と3時に2回も起きてしまった。何が原因だったのか、よくわからない。翌日以降、すっかり回復してしまった。

ともかく、世界遺産の中で眠ることができたのは、非常に貴重な体験だったと思う。